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本田陽一郎公認会計士・税理士事務所
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知識の部屋 年金制度改革

税と社会保険の年収の壁

第3号被保険者がパートタイムなどで働く際、「壁」を超えると税や社会保険料の負担が生じ、一時的に手取り収入が減るため、「働き控え」を生む一因であります。

「年収の壁」が複数存在しているので混乱します。よくあるのは、税と社会保険の「壁」を混同しているパターンです。年収の壁は、税に関わるものと社会保険に関わるものに分かれ、税制改正などによって適用ラインが従来から変化しているものもあります。

最初の分岐点となるのが、「住民税の壁」。現行では原則、前年の給与収入が年100万円を超えると、住民税の支払いが発生します(2026年度からは前年の給与収入110万円に引き上げ)。

次が、106万円もしくは130万円という「社会保険の壁」。現状では、厚生年金保険の被保険者数が51人以上である特定適用事業所に勤務する短時間労働者が一定条件を満たし、年収が106万円以上となった場合、社会保険への加入義務が発生します。

勤務先が前述の「106万円の壁」の条件に当てはまらないときは、年収130万円以上になると配偶者の扶養から外れ、自ら社会保険に加入します。ちなみにこの「130万円の壁」は学生アルバイトなどには適用されません。19歳以上23歳未満で親などの扶養に入っている人(被保険者の配偶者を除く)は、2025年10月から「年収150万円」が社会保険加入の適用ラインに。年収150万円以上になると、親などの税負担を軽減する扶養控除の対象外となったため、これに合わせて社会保険の扶養からも外れることになりました。

さらに、2025年の税制改正で変わったのは、扶養する側が所得税上の配偶者控除や扶養控除を受けられるかどうかの分かれ目となる「扶養の壁」です。これまでは「103万円の壁」と呼ばれていましたが、改正によって収入要件が年収123万円まで引き上げられました。年収123万円を超えたとき、配偶者特別控除が満額受けられるかどうかの分岐点も、従来の150万円から160万円に引き上げられています。

2025年金改正

2025年6月に成立した年金制度改正法で大きく変わったのは、上記の「壁」のうち、社会保険にかかわる「106万円の壁」です。

パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者が社会保険の被保険者となるには、「1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が正社員など常時雇用者の4分の3以上である」という「4分の3基準」が大原則としてあります(この場合は学生も対象)。

一方で、現行制度では個人事業も対象のため、この「4分の3基準」を満たしていなくても、以下の①〜④に条件が当てはまれば、社会保険に加入することになっています。

①被保険者数51人以上

②短時間労働者の週の勤務が20時間以上

 ③短時間労働者の給与が月額8万8,000円(年収106万円)以上

④学生ではない、という4つの要件を満たすと、社会保険への加入義務が発生していました。

しかし、改正によって①の企業規模や③の賃金などの要件が撤廃され、②の週の勤務が20時間以上と④の学生ではないこと、という要件のみになります。

手取りの谷

改正を実施すると、「手取り収入をなるべく減らしたくない」というパートタイマーが最低賃金上昇によって就労調整をさらに早めるのではないかという声をはじめ、中小企業や個人事業所にとっては人件費上昇と社会保険料負担の“ダブルパンチ”になるのではないかという懸念があります。

そうした不安に応え、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者・事業主への支援策も公表されています。従業員数50人以下の会社が支援策を申請すると、

例えば月収が8.8万円(年収106万円)であるパートタイマーの場合、

通常労使折半となる負担の割合が

労働者25%に対し、事業主75%に。

事業主の上乗せ負担分は、国が全額補助する仕組みです(3年間の時限的な特例措置)。

社会保険料負担による「手取り減の谷」はできるものの、働き手にとってはメリットもあります。厚生年金に加入することで、将来の年金が増えることに加え、勤務先の健康保険から傷病手当金や出産手当金などが給付されるようになるからです。また、単身のパート・アルバイトなど、国民年金・国民健康保険料を全額自己負担していた第1号被保険者は、同じ就労条件でも今後は厚生年金と健康保険に加入するため、会社側が保険料を半分負担してくれることになります。法改正で新たに社会保険適用となる人の35%が第1号被保険者のため、こうした人にとって、今回の改正のインパクトは大きなものだといえます。

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